曳山磨いた漆、世界へ

渡邊さん、「触れる工芸」に挑戦

 長浜曳山まつりの曳山などの修復を手がけてきた三ツ矢元町の漆職人・渡邊嘉久さん(62)=渡邊美術工藝代表=が、天然漆の手触りを楽しむたまご形の工芸品「naderu(なでる)」を開発。8日から海外のクラウドファンディングサイト「Kickstarter」で販売プロジェクトを始め、長浜で培ってきた漆の技を世界へ発信している。

 渡邊さんは30年以上にわたり漆の仕事に携わり、仏壇のほか、曳山の漆工品など文化財の修復を手がけ、2017年には滋賀県選定保存技術「曳山漆工品修理」の保持者に認定されている。

 今回つくった「naderu」は、器として何かを入れたり、飾ったりするものではない。ケヤキの木地を手のひらに収まるたまご形に削り、天然漆を幾重にも塗って乾燥と研磨を重ねた。手に取り、ゆっくりとなでながら漆独特の滑らかさや木の温もりを感じてもらうもので、渡邊さんは「触れる瞑想道具」と位置付けている。

 仕上げは木目を生かす「拭き漆」をはじめ、鏡面のような艶を出す「木地呂」、錫粉を使う「梨地」、貝をあしらう「螺鈿」、使い込むことで表情が変わる「根来」の5種類。小サイズは長径60㍉、大は70㍉で、価格は1万4000円から6万円。

 「naderu」を海外へ送り出すきっかけになったのが、今年2月に東京ビッグサイトで開かれたギフトショー「LIFE×DESIGN」。国内外の来場者が実際に手に取り、手触りへの反応が良かったことから、「言葉が通じなくても、触れれば価値が伝わる」と海外展開への手応えを得たという。

 たまご形には生命の誕生や再生、新たな始まりの意味を込めた。欧米のイースターエッグにも通じる形を入り口に、日本の漆文化を知ってもらいたいという。

 長浜の曳山や仏壇を守ってきた漆の技を「世界の人が手のひらで触れる工芸」へ。渡邊さんの新たな挑戦が始まっている。

掲載日: 2026年09月16日