寺田町出身の村山さん、自費出版
寺田町出身のフリーライター・村山明子さん(東近江市)が新刊「山内さんの愛おしいもの・コト・昔語り」を自費出版。絶滅の危機に瀕していた伊吹大根を復活させた木之本町古橋の山内喜平さん(94)と妻・和子さん(93)の思い出話などをまとめている。
村山さんは知人の紹介で2017年、山内夫妻と知り合い、2人から聞き取った地域の文化や風習などを18年1月から3年間、読売新聞に月1回、折り込みの情報紙「DADAジャーナル」に連載。1冊の本にまとめた。
山内さんは県の農業普及員をしていた1977年、無くなりかけていた伊吹大根を唯一、育てていた米原市の女性を知り、種を分けてもらった。しかし、その種は交雑が進んでおり、苦労の末、約20年かけ、原種化した。
村山さんは山内さん宅を訪問するうち、古橋の珍しい食文化や風習などを聞くようになり、メモを取った。地元には昔から栢(バイ)の実を食べる習慣があった。バイはピスタチオのようなアーモンド大の木の実。生のままでは食べられず、本ではバイの生態から収穫、処理の方法のほか、山から生活の糧を得ていた先人の暮らしぶりなどを紹介している。
元教員の和子さんは地元の習わしに詳しく、野辺送りの際、女性が羽織った黒打掛などや葬儀の時の装束について解説。「(最近は)コロナ禍で家族葬も増え、弔いの形が急激に変わっている」と語っている。
また、山内夫妻は伝統食にも精通しており、オコナイのメニューや山菜のゼンマイ、発酵食の小鮎のへしこや鮎寿司の成り立ち、レシピなどを紹介。先人の知恵や思いなどが温かみのある方言を通して、伝わってくる。
村山さんは「山内夫妻はいろんなことに感謝し、昔のことを大事にしている。今の私達にはないことであり、自分が納得したことを伝えたかった」と話している。
A5判、175ページ。あいたくて書房、己高庵、高月観音の里歴史民俗資料館、長浜みーな編集室、伊吹山文化資料館で販売。1650円。