町衆の家から見つかる、 「夕渡り」「籤取り式」など描く
大正時代の長浜曳山まつりの祭礼行事を描いた「長浜曳山祭礼図」が市内で見つかり、15日から長浜城歴史博物館で初公開される。曳山のみを描いた屏風や版画はあるが「太刀渡り」「籤取り式」などの行事全体を描いた作品は初めての発見で、同博物館は「当時の祭礼のようすを知ることができ、重要な資料」としている。
祭礼図は41枚で、いずれも画絹(がけん)に描かれている。サイズは縦が約54㌢、幅が42・5~162・5㌢。
子ども歌舞伎の稽古、かつら制作、山組集会、曳山巡行、夕渡り、長刀組の太刀渡り、桟敷席、お旅所に集合した曳山など多彩な行事や長浜町のようすが描かれている。同博物館は「全体を通して筆致は穏やかであるが、描かれた人々の表情は生き生きとしており、まつりで活気づく町のようすがよく表現されている」と評価している。
制作は大正4~6年ごろと推定している。大正4年以降に長浜町で設置が始まった電柱が描かれている一方で、大正6年まで実施していた春の曳山全基出場のようすがうかがえることから、この頃の曳山まつりを描いたとみられる。
祭礼図の存在は昨年春、市内の古美術商から知らされ、元々は市内の町衆の家にあったという。以来、博物館が描かれた絵を分析してきた。落款印章(らっかんいんしょう)はなく、作者は不明。それぞれの描写が詳細でまつりを記録しようとする意図が強く感じられることから、町衆の依頼受けた作者が実際の祭礼を見て制作したものと推測している。
曳山まつりを題材にした絵画作品は、曳山のみを描いた屏風や版画はあるが、祭礼行事全体を描いた作品はこれまでに確認されておらず、文化財級の発見という。また、祭礼行事だけでなく、当時の長浜の町中の景観も描かれている点も注目される。
博物館では新発見の「長浜曳山祭礼図」のうち10点を4月20日まで公開する。入館料は大人410円(4月1日以降は500円)、小中学生200円(長浜、米原は無料)。月曜休館。