ラクダの毛刈りアート、世界へ発信

武市さんインド大会で優勝、次は中東・アフリカへ

 長浜市の武市萌美(めぐみ)さんが今月11日にインドのラジャスタン州ビカネールで開かれたキャメル・フェスティバルのラクダ毛刈り大会で、2019年以来となる2度目の優勝を果たした。今後、大会優勝の看板を引っ提げて、中東やアフリカに渡り、毛刈り文化を広めたい考えだ。
 インドやパキスタンなどに古くから伝わるお祭りや祝い事ではラクダの毛をカットして絵のように着飾る文化があり、毛刈り大会はその出来栄えを競うもの。
 武市さんは4回目の挑戦となった2019年に初優勝。その後はコロナ禍で中止となり、一昨年は3位、昨年は2位だった。「今回こそ再び優勝を」と意気込んだものの、ラクダ探しに苦労したという。気軽に「いいよ。使ってくれ」と話していたラクダの所有者がラクダを売ってしまったり、「働いているラクダだからお金がもっとほしい」と言われたりと、思うようにラクダを調達できず、出場を諦めかけたところで、困っていることを知った友人がラクダを所有する親族に掛け合って借りることができた。
 キャンバスとなったのは8歳のオスの「カルー」。現地の言葉で「黒い」という意味だ。ダークブラウンの毛を持ち、濃淡での描画に最適という。いったんバリカンで体毛の長さを揃えた後、市販のハサミで刈り込んだ。
 描いたのはビカネールの風物。マハラジャ時代の王様、ダンスしているラクダ、歴史的建造物などを25日間かけて緻密に描き出した。
 日が経つと毛が伸びることから同じ箇所に何度もハサミを入れる。朝から夕方まで作業に没頭し、「カルーがすごく懐いてくれてとても刈りやすかった。相性が良かった」と振り返る。
 「これまでで最高の出来栄えだった」という作品。大会で見事優勝したが、「この大会はこれが最後」と区切りをつける。
 長年、ラクダが運搬や農耕を担ってきた地域ではその役割がトラクターなどにとって代わられ、ラクダを飼う人は減っているという。毛刈り大会の出場者も高齢者ばかり。ラクダの毛刈り文化の衰退を目の当たりにし、「この文化を他の国にも広めたい」と次なるステップを見据える。今年はインドを飛び出してUAE、サウジアラビア、モロッコへ渡航し、現地でラクダの毛刈りを披露する。
 「ラクダレースを見たい」と20代半ばでオーストラリアに渡ってラクダ牧場に住み込み、その後、インドに渡って毛刈りに打ち込んできた武市さん。テレビ番組の「世界ふしぎ発見」や「クレイジージャーニー」にも出演し、ラクダの魅力を発信している。
 「国が変われば人柄も変わる。世界に出ると価値観が変わる。日本で思い悩んでいたことが、世界ではちっぽけなものだったことにも気づかされる。いろんな人に出会って、いろんな価値観に触れたい」。
 物怖じせずに世界に飛び出す武市さん。次なる地ではどんなラクダに出会い、どんな絵を描くのだろうか。

 

掲載日: 2025年01月24日