投網漁、化石採集…多彩なメニュー
豊かな自然環境を生かして学生が地域に出向いて自然観察やボランティア活動に取り組む講義「湖北動物プロジェクト」が長浜バイオ大学で行われている。キャンパスを飛び出して週末に野外で開講するユニークさが学生に評判で、1、2年生が対象にもかかわらず、3、4年生や院生も自主参加することもある人気ぶりとなっている。
アニマルバイオサイエンス学科の講義で、年間13回、多彩なテーマを教授や助教ら7人が受け持つ。例えば今年度は田村山に生息する希少種のヤマトサンショウウオの保護、大谷川でのオオサンショウウオ調査、米原市番場の千石谷のビオトープ調査、養殖ビワマスの餌作り・餌やり、県の「魚のゆりかご水田プロジェクト」の手伝い、天野川での投網漁・やな漁の体験、多賀町での化石調査などがあった。
河内浩行教授によると、プロジェクトは週末にアパートに引きこもっている学生を外に連れ出そうと2014年度に故・野村慎太郎教授の発案でスタートした。講義は週末開講のため参加は自由だが、単位はつく。毎年20人ほどが受講しているという。
湖北広域行政事務センターの最終処分場整備に伴って設けられた米原市番場のビオトープで11月に実施した生物調査では、希少種のヤマトサンショウウオ、ホトケドジョウ、メダカを含む27種類を確認した。処分場整備地は豊富な水生生物が集まる湿地だっただけに、ビオトープにどれくらいの生物が戻って来るのか引き続き調査を続ける方針だ。ヤマトサンショウウオは今回初の発見で、齊藤修教授は「是非、復活を見守りたい」としている。
醒井養鱒場ではヤマメやアマゴ、イワナなどの採卵や受精を体験し、姉川のビワマス養殖池では餌づくりと餌やりに取り組んだ。
ニゴロブナなどの琵琶湖の在来魚が産卵のために水田に遡上しやすいよう水路に魚道を設けた「魚のゆりかご水田」を学ぶ講義では、東近江市栗見出在家町の水田をフィールドに、5月は田植え、6月は魚類調査、9月は稲刈りに取り組んだ。住民によるご飯の炊き出しが学生に人気という。
天野川での投網漁・やな漁の体験は上多良漁協の協力で実現。投網の投げ方の指導を受けてマゴイなどを捕獲したほか、漁協が設置したやなでコアユを網ですくい上げた。
12月には多賀町で化石採集に取り組み、四射サンゴやフズリナの化石を見つけた。田邉瑠里子助手は「進化して現在の生物がある。化石を通じて進化について勉強できる。地域のことを学ぶには地質を学ぶことも必要」と意義を語っている。
インドネシア人留学生のアイメ・パトリックさん(24)=4年生=は4年間を通じて講義を受講している。もちろん3、4年生は単位がもらえない自主参加。「室内の講義だけでは想像しにくいこともあり、現場で生態に触れられることが魅力。メダカの種分化の研究をしており、このプロジェクトで学んだ採集・測定技術などを今後の大学院での研究にも生かせる」と話している。
「他の大学にはない、かなりユニークなオリジナル講義」と胸を張る教授陣。次年度は新しい取り組みとして長浜農業高校での牛の世話、地域イベントでのミニ水族館の出展を計画し、湖北地域をフィールドにした講義をさらに活発化させたい考え。