キャンプ道具で漆の魅力発信

塗師の中川さん  仲間4人で制作集団立ち上げ 日本の伝統技術 長浜から全国へ

 曽根町の老舗「カネイ中川仏壇」5代目で、漆ガレージブランド「GNU(ヌー)」を立ち上げキャンプ道具の漆塗りなどを手掛けている中川喜裕さん(32)。仲間4人でクリエイター集団「HikU(ハイク)」を結成し、えきまちテラス長浜に事務所兼ギャラリーをオープンさせた。キャンパー垂涎の道具を次々と生み出し、オープンの5日には早朝から開店を待つ行列ができるなど、注目の高さをうかがわせている。

 メンバーは中川さんのほか、レザークラフトを生かしたキャンプ道具を制作し全国のキャンパーが注目する中村友洋さん(43)、写真家・ツジタシンヤさん(32)、デザイナー・前川有季さん(28)。兵庫県猪名川町在住の中村さん以外は、長浜を拠点に活動している。

 仏壇需要の低迷で漆塗りなどの伝統技術を受け継ぐ職人の高齢化と後継者不在を危惧する中川さんは、仏壇の「お洗濯」や長浜曳山まつりの曳山修理に携わる中で、技術継承の大切さを痛感。漆塗りの魅力を世に再認識してもらうため、キャンプ道具に無料で漆を塗るプロジェクトや、漆塗り体験ワークショップに取り組んでいる。昨年は新事業としてGNUを立ち上げ、漆塗りのキャンプ道具を作り上げてきた。

 SNSを通じて中川さんの取り組みを知った中村さん。日ごろから「日本には伝統工芸の素晴らしい技術があるのに、なぜ海外製品ばかりに目を奪われるのか。大事な技術がどんどん失われてしまう」と危機感を抱いており、中川さんについて「こういう若者を盛り上げていかなければならない」と、HikUの立ち上げに繋がった。

 ツジタさんは写真や動画の撮影でHikUの取り組みを発信し、前川さんはオリジナルキャラクターの制作、ステッカーやTシャツなどの製品化を担当している。

 HikUはこれまでに、木目の美しいトチに漆を塗った保冷缶カバー、縁を薄さ1㍉に仕上げた木製ウイスキーカップ、柄に漆を塗った刃物など、職人技術の粋を集めたキャンプ道具を生み出している。輪島の曲げわっぱ職人が作った弁当箱に自身で漆塗りを施す「アウトドア漆キットtamate—bako」は、漆塗りの魅力を直に体験できる商品として注目を集めている。

 事務所兼ギャラリーがオープンした5日は早朝から行列ができ、遠くは九州や東北地方からの来場者もあった。中村さんの知名度の高さによるが、漆技術を応用したキャンプ道具への関心の高さをうかがわせた。

 「日本の伝統工芸である漆塗りの価値を、新しい形で世に広めて欲しい」と期待する中村さん。中川さんは「漆文化を広めるのはもちろんだが、オープン日に多くの方が長浜を訪れていただいたように、長浜を盛り上げ、地方創生にもつながる活動をしたい」と決意を込める。

 HikUではキャンプ道具の製作・販売のみならず、定期的に体験イベントを開いて伝統工芸に市民が触れる機会を増やす。

 HikUは「The  story  of  hiking  with  you」(あなたと一緒に高みを目指して登ってゆく物語)との思いを込めている。事務所兼ギャラリーは主に土日にオープン。開店日などの詳細は代表℡080(5535)2758へ。

 

掲載日: 2022年06月08日