長浜鉄道スクエアは、旧長浜駅舎・長浜鉄道文化館・北陸線電化記念館の3館で構成される。長浜鉄道文化館には北陸線の歴史が、電化記念館には蒸気機関車D51と、北陸線で活躍した交流用電気機関車ED70が展示されている。旧長浜駅舎は明治15年(1882)に建設された日本で最古の駅舎である。旧国鉄が定めた鉄道記念物第1号であり、滋賀県指定有形文化財でもある。日本の近代化を象徴する文化財としての価値はすこぶる高い。
この旧長浜駅舎の前庭に、7つの石額(せきがく)が並ぶ。駅舎に向かって左側に並ぶのは、明治17年に使用開始された柳ヶ瀬トンネルに掲げられたもの。柳ヶ瀬側にあった「萬世永頼(ばんせいえいらい)」の額は、このトンネルに日本の近代化を託すとの意味で、初代首相伊藤博文の書である。今庄側には柳ヶ瀬トンネル開削の経緯が記されている。一方、右側に並ぶ4つはいずれも逓信(ていしん)大臣だった黒田清隆の書で、敦賀・今庄間の北陸線トンネルに掲示されていた。
敦賀・福井間の北陸線は、明治26年(1893)に着工され、明治29年に開業しているが、敦賀から今庄間の山岳地帯を越えるため、途中に13のトンネルが掘られた。現在も11のトンネルが現存し、平成28年に国登録文化財となっている。
11のトンネルは、長さ1170㍍の山中トンネルから、わずか64㍍の鮒ヶ谷(ふながや)トンネルまで様々だが、レンガや切石を用い、坑門には意匠を凝らしたポータル(坑道正面)があり、坑道内のアーチ型も実に美しい。旧駅舎前の右奥にあるのは、敦賀から数えて2つめのトンネル・葉原(はばら)トンネル(979㍍)の今庄側と敦賀側の入口に掲げられていたもの。前者は「永久無窮(むきゅう)」とあり、この線路が永久に役立つことを願った言葉。後者は「與国咸休(よこくかんきゅう)」(與国みな休す)とあり、同盟国がみな平和になるという意味である。
手前の2つは敦賀から10番目の山中トンネルの石額で、今庄側は「徳垂後裔(とうすいこうえい)」で、この事業を完成させた徳は子々孫々まで伝わるということ。、敦賀側は「功加于時(こうかうじ)」で、事業の完成は時代の要請にかなっているとの意味。いずれも中国の古典から取った言葉と見られるが、明治の政治家の漢学への造詣の深さと共に、鉄道事業への期待が感じられる。鉄道スクエアでは、9月13日からナイトミュージアムが始まる。旧駅舎内部の案内は、このイベントに参加するのがよい。22日の午後6時半からは、ミュージアムツアーもある。詳しくはHPを参照。
.jpg)
旧長浜駅舎前庭の石額群(駅舎に向かって右側)
淡海歴史文化研究所 所長 太田浩司
(滋賀夕刊 2024年9月3日掲載)




