4月1日、大通寺の新御座(しんござ)において、長浜450年戦国フェスティバルのオープニングセレモニーが開催された(写真)。この新御座は、先に公開された木村拓哉さん主演の映画「レジェンド・アンド・バタフライ」でも使われた。信長が安土城において、家康の前で明智光秀を足蹴(あしげ)にするシーンである。この新御座、重文(重要文化財の略)の広間の背面にあるので、あまり知られていない建物だが、上段の間があり、広間と同じく対面所であることは間違いない。「新御座」の「新」は同じ対面所である広間より「新しい」という意味ではないかと思う。
この建物、少々建築学的に構造を述べると、南北通りの中央で2列に分かれ、東側は上段の間(16畳)と下段(28畳)からなる。西側は多彩な襖絵に囲まれた5つの小部屋が並ぶ。東側と西側の列は、市指定文化財の岸駒(がんく)による見事な梅図12面によって仕切られている。岸駒の作品は、天明6年(1786)の作だ。上段の背後は、幕末の絵師である狩野永岳(えいがく)による琴棋書画図(きんきしょがず。人々が琴や将棋、書画をたしなむ図)が描かれる。
大通寺の記録によると、新御座は文政9~11年(1826~28)に再建され、さらに、大正元年にも再建されたという。大通寺に残る文政の再建直前の絵図によれば、現在の上段部分がないので、以前はもう少し小規模な建物であったようだ。岸駒の絵はそれ以前からあったが、狩野永岳の絵は文政再建に当たって、増築された上段部分に新たに描かれたと考えられている。この新御座の来歴は不明な部分もあり、大正再建は疑問視する向きもある。
この他、大通寺には明暦(めいれき)3年(1657)建立の本堂、ほぼ同時期建造の広間があり共に重文。後者の上段は狩野派の障壁画(しょうへきが)でおおわれる。その奥には、狩野山楽・山雪の襖絵で飾られる含山軒(がんざんけん)と呼ばれる客殿・庭園もある。含山軒は伊吹山を借景(しゃっけい)に使った(山を含んだ)という意味。西に接続する客殿・蘭亭(らんてい)には「蘭亭曲水の図」が描かれて、庭園も附属する。いずれも重文で、庭園は国指定名勝。
現在の大通寺の建物は、この含山軒が最奥(最北)だが、江戸時代の絵図を見ると、さらにその北にも学問所(庭園のみ残る)など多くの建造物が立ち並んでいた。この今はない北側建物の東には「お裏(うら)庭園」が広がる。中央に池泉を配し、舟遊びや和歌の会などが開かれていたと推測される。この庭園は長浜市の都市公園「大通寺公園」として、市民に公開されているので、是非訪れてみるといい。大通寺は建物・襖絵・庭園の魅力が満ち満ちており、さながら街中の美術館と言える。
淡海歴史文化研究所 所長 太田浩司
(滋賀夕刊 2023年4月13日掲載)





