「金継ぎ」、バルセロナ大学で披露

杉中さんが実演、日本の漆文化を発信

 仏壇仏具店「宗永堂」(国友町)の店主で塗師の杉中伸安さん(60)がスペインの公立バルセロナ大学の招きを受けて、欠けた器を漆で接着して金で装飾する日本の伝統技術「金継ぎ」の講義を行った。

 金継ぎは、壊れたものを直して大切にする精神性とそのデザイン性が海外で注目を集めている。

 バルセロナ大学は1450年設立のヨーロッパ最古の大学の一つで、学生約6万3000人が在籍するスペイン屈指の高等教育機関。昨年、同大学で文化財修復を専攻するマリーナ・デュアルテさんが杉中さんの元で2週間の修業に励んだのが縁で、同大学の文化財修復科の講義に招かれた。

 杉中さんは9月13日から18日までスペインに滞在し、うち1日、講義を行った。講義は一般公開され学生や市民約100人が訪れた。漆の歴史、日本とスペインの関わりなどを紹介した後、割れた皿を使って金継ぎを実演。漆を塗布して割れた部分を接着したり、金粉で装飾したりする工程がスクリーンに映し出され、出席者はスマートフォンで撮影するなど身を乗り出して杉中さんの技を観察していた。

 学生や市民が想定を超えて詰めかけたため直前になって急きょ講義室を変更。ヨーロッパで「KINTSUGI」として注目を集める日本の伝統技術の人気の高さをうかがわせた。

 杉中さんは「学生は文化財の修復を学んでいるが、ヨーロッパでは漆を使う文化がなく、興味を持って熱心なようすだった。ブームの金継ぎを通じて日本の漆文化を知ってもらうきっかけとなり、嬉しい」と話した。

 バルセロナにはサグラダファミリア大聖堂やグエル公園など天才建築家アントニオ・ガウディが設計した建築物が数多く残る。大聖堂などを視察した杉中さんは「デザイン、配色、発想に刺激を受けた。今後、私の作品にその影響は必ず出てくるでしょう」と話していた。

掲載日: 2024年10月09日