「使い続けたい」、声に応え

神前町の加藤家具「修理屋さん」始めて7年

 おじいちゃんから譲り受けた椅子、先代が使っていた和箪笥など、思い出の詰まった家具を使い続けたい—。そんな思いに応えて、壊れた家具に新しい生命を吹き込む「家具の修理屋さん」として加藤家具(神前町)の代表・加藤悦二さん(70)は日々、依頼者からの相談にのっている。

 レザー張りを鋲で留めたおしゃれで高級感のあるデザインのダイニングチェア。長年の使用で背もたれ部分が破損し、座面のクッション性能も低下した。それでも使い続けたいとのユーザーの依頼を受け、アイボリー色のレザーに張り替え、まったく新しいチェアへと生まれ変わった。

 2018年から「家具の修理屋さん」の看板を掲げている加藤家具には県内一円からさまざまな依頼が舞い込んでいる。昨年には慶雲館にある明治天皇皇后両陛下の玉座を長浜観光協会の依頼で修復している。

 加藤家具の前身は大正11年に加藤さんの祖父・辰次郎氏が大宮町の大手門通りで創業した「加藤洋家具」。彦根市の同名の家具店からの暖簾分けだった。西洋文化の流入で洋服を収納する洋箪笥の需要があり、従来の家具店と差別化するために「洋家具」にしたとされる。

 昭和期になって神前町に移転し、戦時下では財閥企業の下請けとなって船舶のフローリングなども手掛けた。戦後は学校の学習机の製作などに追われ、8人程の職人を使用していたという。その後は工務店の下請けなどでオーダーメイドの家具を作っていたが、「ただ作るだけでなく、古く良きものを生き返らせたい」と修理専門へと舵を切った。

 依頼者から家具に込められた思い出やどのように修理したいのかなど細かに聞き取り、修理方針や見積もりを出して依頼者の納得が得られれば修理に入る。

 「修理の依頼を受けたもののどうやって直したらいいものかと悩むことも多い。材料は何を使おう、塗装は何を塗れば、錆びた金具はどうしよう、と」。頼りにするのは自身が培った職人のネットワーク。加藤さん自身で修繕するものもあるが、その多くは家具職人や塗装、張り替えの専門家に発注し、金具類は鉄工所に依頼している。

 「あんじょうしてくれた。これでまた使えるわ」—。家具の引き渡しの際、依頼者から感謝の声をかけられることも多い。加藤さんは「この仕事をしていて、一番うれしい瞬間ですね」と話している。

 問い合わせは加藤家具℡(62)0729へ。

掲載日: 2025年05月30日